業種

医療機器営業の仕事内容、必要な資格とは?

そもそも医療機器業界とは?

まずは医療機器業界とはどのような業界なのかについて説明します。

医療機器とは?

まずは医療機器営業の「医療機器」とは何かについて説明します。

医療「機器」と名前がついているので、例えばMRIやX線撮影装置のような機械をイメージするかもしれませんが、医療機器は機械に留まりません。例えば、手術用の不織布やカテーテルなどの器具類も医療機器に含まれます。

医療機器の商流

医療機器営業にはメーカーも存在しますが、卸売業者も存在します。

そして病院などの医療機関と緊密に連携することが必要になるので、地域密着型で活動している卸売業者もたくさん存在します。

似たような業界である医薬品卸売業の場合、売上上位4社がシェアの約85%を獲得していますが、医療機器卸売業の場合は上位10社のシェアを足しても約25%程度と、経営統合が進んでおらず、中小企業も活躍しています。

また、日本の医療機器流通額の約半分は海外からの輸入製品なので、海外の医療機器メーカーの独占販売権を獲得して、事業をしている企業も存在します。

海外製品も多くスピーディーな対応が求められるので、卸売業者が活発に活動していますが、メーカーが直販をしている場合もあります。大手資本の大型医療機器や、一部の大病院などについてメーカーが直接販売しています。

商品の幅が広いため、卸売業者と同様にニッチ分野で活躍している中小医療機器メーカーもたくさん存在します。

医療機器と法律

医療機器は患者の健康や、生命に重大な影響を与える製品です。よって、誰でも無許可で製造・販売できるわけではなく、法律の規制を受ける必要があります。

医療機器はそのリスクの高さによってクラスⅠからクラスⅣまで国際的に分類されています。

クラスⅠはメスやX線フィルムなどの不具合が生じてもリスクがほとんどない機器、クラスⅡはMRIやカテーテルのような不具合が生じた場合でも人体へのリスクが低い機器を指します。

クラスⅢは透析器や人工呼吸器のように不具合が生じると人体に重大なリスクが発生する機械、クラスⅣはペースメーカーや人工心肺のような不具合が生じると生命の危機に直結する機器を指します。

クラスⅠは日本では一般医療機器に分類されて製造にあたって承認などは必要ありませんが、クラスⅡは管理医療機器として原則として第三者認証、時には大臣認証が必要になります。

クラスⅢ、Ⅳは高度管理医療機器に分類されて、大臣認証が必要になります。

そして、高度管理医療機器や保守点検に専門知識が必要となる特定保守管理医療機器は許可がないと販売などができないようになっています。

医療機器営業の仕事内容を解説!楽って本当?

医療機器業界の中で医療機器営業はどのような仕事をしているのかについて説明します。

医療機器営業の仕事

医療機器営業の仕事はもちろん医療機器を販売することです。

メインに営業先は各病院となり、手術や治療で使う機器は主に医師に対して営業します。ただし、MRIのような高価な医療機器は導入に数千万円、数億円かかる場合もあるので、医師個人だけではなく病院の経営層に対して営業をする場合もあります。

検査に使用する機器は病院だけではなく、大学や検査機関に営業する場合もあります。

どのような医療機器を取り扱っているかによって、営業先も営業スタイルも若干変わってくるので注意してください。

メーカーと卸売業者の違い

メーカーか卸売業者かによっても仕事内容は若干異なります。

メーカーは自社製品を営業するのに対して、卸売会社は自社が取り扱っている幅広い製品の中から顧客ニーズにあった商品を提案します。

また、卸売業者経由で商品を販売しているメーカーの場合は、卸売業者への営業及び関係構築も重要な仕事となります。

一方で卸売業者の場合は価格交渉や伝票のやりとりといった、事務作業の比率がメーカーの営業職よりも多くなります。

医療機器営業は楽なのか

医療機器営業は楽なのでしょうか。もちろん、「楽」ということの捉え方によっても異なります。

医療機器営業で大変だと言われているのが、医師に合わせて営業しなければならないということです。

例えば、一般の営業の場合、取引先に対してはアポイントをとってから訪問するのが通常です。今でこそ、医療機器営業でもアポイントを取るケースも増えていますが、昔はアポなしが通常でした。

忙しい医師にアポを取るのが困難なので、医師が比較的時間が相手そうなタイミングに病院に訪問して、隙を見つけて営業をするのが一般的です。

また、取り扱っている医療機器によっては、手術などによって急きょ必要になることもあるので、医療機器営業にも緊急の対応が求められることがあります。

このような理由から、営業の中でも比較的忙しいと考えられます。

一方で、営業としての難易度が決して高くないので楽と言えば楽だと言えます。

基本的にルート営業なので、保険や不動産のように飛び込みはテレアポを行う必要はありませんし、消費するタイプの医療機器は一度取引さえ始めてしまえば、安定して注文がきます。また、単価も高いので売上もつくりやすいです。

医療機器営業の年収、キャリア、待遇とは?

医療機器営業の年収、キャリア、待遇などについて説明します。

医療機器営業の年収

もちろん、どのような企業に勤めているかによって年収は異なりますが、DODAが発表している2018年版の平均年収ランキングによると、営業機器メーカーの営業は平均年収562万円、医療機器卸営業の平均年収は414万円という調査結果が発表されています。

同調査の全体の平均年収は414万円なので、医療機器卸の営業の年収はちょうど平均、医療機器メーカーの営業の平均年収はかなり高いことがわかります。

もちろん、これは平均年収であって実際の年収はどの事業規模の企業に勤めるかや、インセンティブをどの位貰えるかによっても異なります。

医療機器営業のキャリア

医療機器営業はどちらかと言えば離職率の高い業界ですが、きついからというだけではなく同業者での引き抜きが活発なのもその理由の1つです。

よって、同じ会社の中で出世を目指していくことも考えられますが、医療機器営業として成果を出して、より待遇の良い企業に転職を繰り返していくというキャリアも考えられます。

高齢化による医療費の増大に伴い、医療機器営業のニーズも中長期的に高まっているので、きちんと成果さえ残せれば、仕事にはあまり困らないと考えられます。

医療機器営業の待遇

会社の事業規模や収益性によっても待遇は異なります。医療機器の場合は取り扱う商品の幅が広く、中小企業であってもニッチトップとして高い収益を上げている場合もあります。

よって、中小企業であっても福利厚生が充実している医療機器メーカーは存在します。

卸売事業者については、特殊な医療機器の独占販売権でも持っていない限り、医療機器メーカーほど収益を上げられるわけではないので、待遇はメーカーよりも劣ると考えられます。

ただし、全職種でも見た時には、決して悪い条件ではないと考えられます。

ちなみに、先ほど説明した通り、医師に合わせて営業し、必要に応じて緊急対応が求められるので忙しくなりやすいです。

医療機器営業のやりがいとは?メリット、デメリットをまとめました!

医療機器営業のやりがいは何なのでしょうか?メリット、デメリットと共に解説します。

医療機器営業のやりがい

医療機器営業のやりがいは、医療という人々の健康や生命に直結する産業を支えていることにあります。

医療技術の進歩はより多くの人を健康にし、病気や怪我から命を救うことに貢献しています。また、医療機器営業は技術の普及に不可欠な役割を担っています。

医療機器営業がいなければ病院が医療機器に関する情報を入手したり、新たな手術法に挑戦したりできないばかりか、医療機器が用意できずに患者の健康や生命が救えないかもしれません。

医療と言えば、医者が担い手だと思うかも知れませんが、医者の背後にはそれを支える医療機器営業のような縁の下の力持ちが存在するのです。

医療機器営業のメリット

特に医療機器メーカーの場合は、高給ですし、きちんとノルマを達成してインセンティブを獲得していくと、年収は営業の中でもトップクラスに高くなります。

医療品卸売業者の営業についても、平均年収は医療機器メーカーほどではありませんが、医療という生活に欠かせない商材を販売しているので、好景気・不景気に関わらず一定以上の待遇は期待できます。

また、今後高齢化によって医療費の拡大が予想されますし、それに応じて医療機器営業人材のニーズも中長期的に高まっていくと考えられます。

また、同業者間での人材の引き抜きも盛んなので成果さえだせばより良い待遇の会社への転職も期待できます。

以上のように食いっぱぐれる可能性が低いのも医療機器営業のメリットです。

医療機器営業のデメリット

医療機器営業のデメリットは時間的に拘束されやすいことです。

BtoB営業ですが、病院は24時間、土日も開いている場合もありますし、医師の都合に合わせて営業しなければなりません。

また、扱っている商材によっては急きょ、病院まで商品を持って行ったり、修理対応をしたりする必要もあります。

このように他の営業職と比較しても忙しくなりやすいのがデメリットです。

医療機器営業に向いている人、向いていない人とは?

医療機器営業に向いている人と向いていない人、それぞれの特徴について説明します。

医療機器営業に向いている人

医療機器営業に向いている人の特徴として挙げられるのが、勉強好きであることです。

医療機器は色々な技術が詰まっていますし、使い方をちょっと間違えただけで重大な医療ミスにつながる可能性もあります。よって、医師だけではなく、それを提案する医療機器営業にも医療に関する知識が求められます。

自社の取り扱っている機器に関する勉強が常に不可欠な職種なので、勉強好きである必要があります。

また、コミュニケーション能力も必要です。

基本的にはルート営業なので、難しい営業テクニックは必要ありませんが、医師との関係構築は重要です。

医師から信頼が得られないと、発注が少なくなるかもしれませんし、場合によっては別に医療機器卸売会社などに切り替えられてしまう可能性もあります。

医師ときちんと意思疎通できるコミュニケーション能力は必要です。

医療機器営業に向いていない人

医療機器営業に向いていない人の特徴は向いている人の裏返しで、勉強が嫌いである、医師とのコミュニケーションができない人が挙げられます。

また、仕事とプライベートの時間をきちんと切り分けたい人も医療機器営業には向いていないでしょう。

医療機器営業は、先ほどから説明している通り、どうしても拘束時間が長くなりますし、突発的に仕事が発生する可能性もあります。土日はきちんと休みたい、残業は絶対にしたくないという人は医療機器営業には向いていないでしょう。

医療機器営業とMRはどう違う?

医療機器営業と近い営業職としてMRがあります。医療機器営業とMDの違いについて説明します。

MRとは?

MRとはMedical Representativeの頭文字をとった営業職で、日本語に直すと医薬情報担当者と呼びます。つまり、医薬品に関する営業のことを指してMRと呼びます。

MRの場合は、MR認定資格という公的な資格があります。MR認定資格とはMRとして活動していくにあたって必要な知識や能力を有していることを証明している資格です。

MRと医療機営業の資格

MRとして営業するにあたって、MR認定資格は必須資格になりつつあります。

MR認定資格が無くても営業することはできますが、病院での営業活動にMR認定資格が求められるケースが増加しているからです。

これと対照的に医療機器営業には基本的に資格は必要ありません。

医療機器業界でもMR認定資格のようなMDIC(医療機器情報コミュニケータ)認定制度がありますが、まだまだ営業の現場で求められるケースは少ないです。

MRは商品を販売?

また、MRの営業としての特徴が、直接商品を販売するわけではないことです。

MRはメーカーの営業職として、医薬品に関する情報を医師などに伝えるのが仕事で、実際に医薬品を買う際はMRではなく医薬品卸売企業の営業からとなります。

医療機器営業の場合は、メーカーの営業であっても病院などに直売する場合もあるので営業の仕方は異なります。

学歴や収入

また、要求される学歴や収入にも違いがあります。

一般的にMRになるために高い学歴が求められることが多く、その代わり平均年収も高くなっています。

一方で医療機器営業の場合は求められる学歴などの要件は低く、高卒であったとしても就職することができます。その代わり平均年収はMRと比べると少し低めになっています。

医療現場に対する関わり方

医療現場に対する関わり方もMRと医療機器営業では異なります。

MRが営業するのは基本的に医局前であるのに対して、医療機器営業は必要に応じて深く医療現場に潜り込んで営業をします。

関わる相手は、医師だけではなく必要に応じて、看護婦な放射線技師、作業療法士などに対して機器の使い方をレクチャーすることもありますし、時には手術の現場に立ち会うこともあります。

このように医療現場に対して深くかかわる機会は医療機器営業の方が多いと考えられます。

医療機器業界の将来はどうなる?

医療機器営業の将来はどうなるのかについて予想します。

中長期的に医療機器ニーズは増加する

先ほどから説明しているとおり、高齢化による医療費の増大により中長期的には、医療機器に対するニーズが高まると考えられます。

よって、営業人材のニーズもこれにあわせて高まっていくと考えられます。

地域密着型商社の統廃合は進むのか

また、論点として挙げられるのが、地域密着型の医療機器卸売会社の経営の統廃合は進むのかという論点があります。

冒頭で説明したとおり、医薬品卸売業者は寡占化しつつある一方で、医療機器卸売業者は経営の統廃合が進んでいません。

ただし、今後、経営者の高齢化、事業規模の拡大によるコストメリットなどを理由に地域の医療機器卸売業者の統廃合が進む可能性も十分に考えられます。

日本メーカーの国際競争力について

冒頭で、日本の医療機器の約半分は海外から輸入されていると説明しました、医療機器には高度な技術が求められるので、良い製品は国際的に流通しています。

世界の医療機器市場について考えた時に診断機器分野は強く、オリンパスやテルモ、富士フィルムは国際的にも売上が高いものの、治療機器分野はいまだに国際競争力が弱いです。

アメリカでは新興の医療機器ベンチャーが製品を開発し、大手医療機器メーカーがM&Aをして事業を拡大するという形でイノベーションが発生していますので、日本でも医療機器ベンチャーの出現と大手医療機器メーカーによるM&Aが予想されます。

医療機器営業に必要な資格、スキルとは?

医療機器営業に必要な資格やスキルについて説明します。

医療機器の資格:MDIC

医療機器業界には医療機器情報コミュニケータ(MDIC)という資格がありますが、医薬品業界におけるMRほど浸透している資格ではありません。

現在の所、保有していなくても業務に支障はほとんどありませんが、自分の専門性を証明するために取得しても良いでしょう。

試験は毎年1月に開催されており、資格試験を受けるにあたってはMDIC認定セミナーの4科目を受講していれば、実務経験の有無は問われません。合格率は半分程度なのでそれほど難しい試験ではありません。

また、外回りや商品を納品する際に自動車を使う事も多いので自動車免許は持っておいた方が良いです。

医療機器営業に必要なスキル

医療機器営業に必須なスキルは特にありません。きちんと医師とコミュニケーションが取れて、営業ができるのならば、医療機器営業として働くことは可能です。

営業スキルについても、他の業界の営業と比較して特別高い営業能力が求められるということもありません。

営業経験者なら、医療機器業界未経験、資格なしであっても十分に採用される可能性はあります。

医療機器営業への転職方法を解説!未経験でも大丈夫?

医療機器営業にはどのように転職すれば良いのかについて説明します。

未経験でも大丈夫

まず、医療機器営業の未経験者であっても十分に転職できる可能性はあります。

業界として人手不足ですし、営業の離職率も高いので、人材ニーズは常に存在します。

また、医療機器に関する知識さえ習得すれば、基本はルート営業なので未経験者であっても十分に通用します。

よって、未経験だから採用されないのではないかと心配するのではなく積極的に応募してみた方が良いでしょう。

内資メーカーと外資メーカー

医療機器には国外からの輸入品も多いので、日本で営業を採用している外資系メーカーも多いです。

厳しいノルマなどによって内資系メーカーよりも厳しい営業をしなければならないケースも多いですが、その分だけインセンティブによる高給も期待できます。

高給を目指したいという転職者は外資系医療機器メーカーの求人に挑戦しても良いでしょう。

求人情報の探し方

医療機器営業の求人を探すにあたっては、情報収集が非常に重要です。

一概に大手企業の方が、収益は高く、待遇が良いというわけではなく、中小企業の中にもメーカーが存在していて、そういった企業の方が下手な大企業よりも経営が安定していて待遇が良い場合もあります。

大手だけを見るのではなく、中小企業の求人についても目を通した方が良いでしょう。

必要に応じて転職エージェントを活用

以上のように情報収集が大切なため、自分1人で転職をするのではなく、転職エージェントを使って、条件が良く、自分の希望に合った会社を探す方が良いでしょう。

転職サイトに情報が掲載されている場合もありますが、良い求人は非公開求人になっている場合もあります。

医療機器営業の辞職理由、よくある転職先とは?

最後に医療機器営業を辞職する場合とよくある転職先について説明します。

意外と多い同業者間の引き抜き

他の業界と比較すると、医療機器営業は同業者間の引き抜きが多い業界です。

そして、病院などで営業をしていると、他メーカーの営業と遭遇したりして、自然と他の会社がどのような待遇なのか情報収集もしやすいです。

成果を出している医療機器営業ならば自然とより待遇の良い同業他社に転職するチャンスが回ってきます。

メーカー、卸売業者間の転職

医療機器卸売業者の営業から、医療機器メーカーの営業に転職することもあります。

病院の中で日常的に顔を合わせやすいですし、メーカーとしても病院と太いパイプを持っている卸売の営業は即戦力となる貴重な存在です。

ただし、消耗品系のメーカーが卸売業者から営業を引き抜いてしまうと、会社間の関係性が悪くなって業務に支障をきたす場合もあるので、あえて卸売業者の営業は採用しないというメーカーもあります。

医療機器業界以外への転職

基本的には医療機器業界内の営業職として転職する人が多いですが、医療機器業界以外へ転職する人もいます。

医療機器営業はどうしても激務になりがちなので、もう少しまったりと働けるメーカーや商社の営業職に転職する人もいます。

医療機器営業を辞める

以上のような転職の傾向から、医療機器営業を退職する理由を説明すると、まず多いのが同業他社に対する転職です。

この場合は、医療機器業界の仕事が嫌になったというよりも、より良い待遇の求人が見つかったというポジティブな理由で転職することが多いです。

また、医療機器営業以外に転職する場合の理由として考えられるのが、働き方を改善したいという理由です。

医療機器営業は医師や病院に合わせて営業しなければならないので拘束時間は長くなりますし、勤務も不規則になりがちです。

独身の場合は良いかもしれませんが、結婚したり、子供ができたりすると家族との時間を大切にするために、仕事とプライベートをきちんと区分できるような営業職に転職する場合もあります。