営業理論

営業スタイルに必要な能力

営業スタイルを実現する2つの能力

先だって説明したように、法人営業は5つの営業手法、すなわち「営業スタイル」が存在し、主に取扱商品によって、どの営業スタイルを採るべきかが異なります。

では、あなたの会社や組織の現状の営業スタイルは何でしょうか?
あなたが取り扱っている商品を見れば営業スタイルが確定する、
例えば取扱商品が汎用機器であり、それがプロダクト営業に相当するものであった場合、あなたの会社の営業スタイルは、プロダクト営業であると言えるでしょうか?

実は話はそう簡単ではありません。

というのも、会社/組織が採るべき営業スタイルは取扱商品で決まるものの、それを実現するためには、2つの能力が必要であり、それぞれが「適切に」会社/組織に備わっていないと営業スタイルとして十二分に機能しないためです。

その能力とは以下の2つになります。
①営業スキル:個々の営業パーソンが営業を行うために必要な能力
②営業マネジメント:会社/営業組織が機能するために必要な能力

①は、営業パーソンが主に商談現場で案件を進めていく際に必要な知識や技能を指します。
(商談前の事前準備や社内での架電業務なども含めます)
顧客や商品に関する知識と、顧客折衝やプレゼンといったスキルを駆使して顧客との間で商談を進めていきます。また、顧客との直接のやり取りに限らず、自身のスケジュール管理やタスク管理なども含まれます。

②は、営業マネージャーが営業組織を管理運営していく際に必要な仕組みや制度を指します。
組織や機能設計を行い営業組織を回していきます。また個々の案件の指導、示唆なども行います。
組織を拡大/維持していくための教育や人事配置、評価なども含まれます。

①②は営業スタイルによって、具体的に求められる能力がそれぞれ異なります。

例えば、ソリューション営業の営業スキルでは、顧客の問題を把握し解決に導くための面談スキルが求められるのに対して、サポート営業の営業スキルでは、印象管理や傾聴などといった密なコミュケーションを実現する能力が求められます。

本来、この2つと、取扱商品によって規定される営業スタイルとは一致していることが理想形です。取扱商品によって、営業スタイルが規定され、その営業スタイルに則って、①営業スキルや、②営業マネジメントが規定され運用される、という形が最も企業/組織のパフォーマンスを最大化させることに繋がります。

営業スキル、営業マネジメントと営業スタイルの不一致

ただ実際には、営業スキル、営業マネジメントが営業スタイルと一致していない場合が多いのが現実です。

元々営業スタイルという概念が浸透しない以上、無理からぬ所ではありますが、それでも取扱商品にフォーカスし、商品が最も売れやすい環境を現場やマネージャーが目指していけば目指すべき営業スタイルに近しい所には行き着くこともありえます。

しかしながら、営業スキルは、取扱商品とは無関係に今までの営業経験や過去の成功体験から培われてきたものや、上長からの指示を受けたやり方をそのまま適用する例が多く見られます。

また、営業マネジメントも、やはり取扱商品とは無関係にマネージャーの思いや過去のマネジメント体験から培われたものを踏襲している例が多く見られます。

それ故、営業スキル、営業マネジメントが営業スタイルと一致せず、結果営業のパフォーマンスが思うように上がらないといった状況に陥ってしまいます。

具体例を上げてみてみましょう。

営業スタイルと営業スキルが合致しない場合

例えば取扱商品が汎用機材の営業(プロダクト営業)を行っている中で、本人の営業スキルがソリューション営業である場合を考えてみましょう。

ソリューション営業の営業スキルに則り顧客の現状を受けての問題解決に繋がる提案を行うことで、1件あたりの成約率は高くなる可能性はあります。

ただし、ソリューション営業は現状把握から提案まで1件あたりの商談期間が掛かるため、結果として会社、組織が期待する成約数は上げられないことに繋がりかねません。

またそもそも商品の内容によっては提案の幅が小さいため、本人の志向と関係なくソリューション営業をする機会自体が得られないことも多くみられます。

営業スタイルと営業マネジメントが合致しない場合

例えば取引商品が製造ライン設備の営業(ソリューション営業)を行っている中で、営業マネジメントがプロダクト営業であった場合のことを考えてみましょう。

ソリューション営業では、本来はボリュームよりも1件1件の商談案件の中身(然るべきキーマンとの間で商談が進捗できているか否か)のチェックが必要なところを、営業マネジメントとしてはプロセス重視、ボリューム重視のKPI管理となります。

結果として、メンバに無理なプロセス目標、ボリューム目標を立てさせたり、よしんばそれが達成できたとしても成果には繋がらず商品や体制の不満に流れやすい傾向にあります。

ここで述べている例は何も特殊事例、レアケースということではありません。
大なり小なり多くの企業/営業組織で散見されている例です。

無論、営業スタイルの問題ではなく、必要なマネジメント施策や営業スキル不足によりパフォーマンスが最適化できていないというケースはありえます。

しかしながら、少なくとも企業/営業組織内での営業スタイルと営業スキル、営業マネジメントが一致していないと企業/組織としては十二分にそのポテンシャルが発揮できず営業活動には何らかの齟齬、支障を来してしまいます。

自社の取扱商品が何の営業スタイルを目指すべきかをしっかりと把握し、個々の営業パーソン、そして営業マネジメント側両方がその営業スタイルに従って運用し、必要なスキルや知識の研鑽を積むという形があるべき姿となります。