ナビゲーションスキル

ナビゲーションスキル③問題の抽出

ソリューション営業の商談では、段階的なアプローチを行うナビゲーションスキル(NSS)が必要だと説明しました。
ナビゲーションスキルについては下記の記事をご参照ください。

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ナビゲーションスキルの6つのステップ
① 商談の始め方
② 顧客現状の把握
③ 問題の抽出
④ 課題の特定
⑤ 解決策の提示
⑥ テストクロージング

本記事では、「③問題の抽出」のプロセスについて、具体的な方法と注意点を解説していきます。

「問題」の全体像を捉える

顧客の現状把握ができたら、次にすべきは「問題の抽出」です。
顧客が語る問題は問題全体の一部であることが多いため、問題を探り出す必要があります。
また、顧客が問題を解決する必要があると判断するためには、問題の存在だけでなく、問題の重大性について認識させることが重要です。

問題は何なのか、その問題はどのくらい影響力を持っているのか、という点が整理できれば、問題抽出後の課題設定をスムーズに進めることができます。

顧客の抱えている問題を探り出す

ポイントは「顧客の抱えている問題を探り出す」と「問題を深堀りし、深刻さを理解して貰う」の2点です。以下で、具体的に見ていきましょう。

顧客の抱えている問題を探り出す

問題点の抽出には、仮説をもって「支障・不安・不満などに関する質問」を行うことが有効です。なぜなら、業務上の支障・不安・不満は顧客が抱える問題から発せられていることがほとんどだからです。

下の具体例をご覧ください。

(例)
①支障:既に発生している不具合を確認する
現状のシステムですと、検索性に使いづらさは感じられていませんか?

②不安:今後に対する不安を探り出す
このまま既存のシステムを利用し続けると他社に遅れをとることにつながりませんか?

③不満:現状に対する不満を探り出す
今お使いのシステムで性能面は十分でしょうか?

仮説を持って質問を行うことで、顧客の抱える問題を把握しやすくなることはもちろん、「言われてみれば◯◯という問題もあるなあ」というように、顧客側に欠けていた新たな視点の提供につながる場合もあります。

また、以上の質問に対して、顧客が端的に答えられれば問題ありませんが、答えられないことも少なくありません。
問題の核となる部分について営業担当側がしっかりと拾い、顧客に理解させてあげましょう。

顧客の回答内容に含まれる語句に注意を払うと問題が把握しやすくなります。

顧客の回答で着目する語句

~する必要がある
~しなければならない
~したい
~がまずい
~になってしまっている
~が出来ていない
大切なのは~である
できれば~したい
本当は~でありたい

これらの語句を含む発言には、問題に対する顧客の要望が隠れています。
例えば、「できれば高性能のCという機械を導入したい」という発言があった場合、問題点は「どの機械を選ぶか」ではなく「どのようにしてCを導入するか」となります。

さらに、問題を定量的に押さえるようにすると、以下のような回答を得ることができます。

訪問時期の見逃しによって機会損失が10%ほど出てしまっている
競合が来年導入すると聞いているので焦っているんだよ
できればあと20%程度は性能が上がってほしいな

定量的に押さえることで問題の大きさも把握することができ、その後の解決策を考える上での有益な検討材料となる場合があります。できるだけ定量的な数値を用いた回答を引き出すようにしましょう。

顧客の抱える問題は大きく3つに分けられる

顧客の抱える問題は、経営層や現場部門など組織や階層によって3つに大別されます。予め訪問先の顧客によって問題を事前に想定しておくことで、よりスムーズに商談を進めることが可能となります。

例えば、財務上の成果に関する問題は経営層が抱えている場合が多くなります。
場合によっては経営層に業務効率に関する質問をすることもありますが、基本的には階層に合わせて質問のカテゴリーを選択するようにしましょう。

問題を深堀りし、深刻さを理解して貰う

顧客の抱える問題点を探り出した時点で、今回のソリューション営業における課題の策定に進む方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ここで「問題の深掘り」をしておくことが、非常に重要になります。

なぜならば、問題の影響力は解決すべき問題であると認識したり、優先順位を決める際の重要な判断材料であり、問題を深掘ることで明らかにすることができるからです。
また、顧客が十分に問題の影響力を認識していないと、顧客に費用対効果を理解して貰えないこともあり得るため、注意が必要です。
深掘りをしていく中で、顧客自身が想定していなかった、あるいは過小評価していたマイナス影響を浮かび上がり、問題がより深刻なものとして顧客に認識されます。
その結果、解決策が受け入れられ、受注につながるのです。

ただし、問題の影響を広く、深く示すためには、顧客自身についてはもちろん、顧客の属する業界や自社商品/サービスにつても深く理解することが重要となります。

問題の深掘りで有効な質問の例を下に示します。参考にしてみてください。

①展開:他の視点で見た場合に新たな影響を及ぼすことを示す
現状のシステムだと外出時のセキュリティ上の問題もありませんか?

②拡大:影響力が想定以上であることを示す
営業の方々の入力工数が掛かることで、結果営業生産性に影響が出ていることはないでしょうか?

繰り返しになりますが、ここでは顧客に問題解決の重要性を理解して貰うことが必要です。下記のような顧客の反応を得ることができれば、他の視点や想定を超える影響力を示すことができていると思われます。

確かにそれもありますね
そういう意味だと、もっと損失は大きいか・・・(数値が上書きされる)

ここまで「問題の深掘り」の意義と質問例を示してきましたが、注意しなければいけないこともあります。それは、あくまでも問題の深掘りは「自社の解決策の範囲」を想定して行う、ということです。広がった問題が自社で解決出来ない場合、苦情や悪評価につながり、寧ろ逆効果になってしまうので注意しましょう。

まとめ

問題の抽出プロセスでは問題を探り出し、その問題の影響力を顧客に正しく認識させることが重要です。
顧客の表現に着目したり、適切な質問を投げかけたりするためには、仮説を持って商談に臨みましょう。
顧客にとって、問題を解くことのインパクトが、投資コストを上回る状態を作りだすことで次プロセス以降をスムーズに進めることができます。

次回は「課題の特定」に入っていきます。