製薬会社の営業MRの仕事内容を解説!一般的な営業職との違いとは?
まずは製薬会社の営業MRとはどのような職業なのか、一般的な営業職とどのように違うのかについて説明します。
製薬会社の営業MRとは?
まず、通常の業界であれば営業は「営業」と呼ばれているのに、なぜ製薬会社の営業だけ「MR」と呼ばれているのかと疑問の思う人も多いかもしれません。
MRとは「Medical Representative」の頭文字を取った言葉で、日本語で「医薬情報担当者」と訳します。
もちろん、働いている製薬会社の医薬品について営業する営業職でもありますが、それと同時に医師や薬剤師に対して薬の安全性や有効性に関する情報を提供して薬が安全に使用されるような環境を整のえるプロフェッショナルです。
MRの営業先は病院や調剤薬局
ちなみに薬には大きく分けて一般医薬品と処方箋医薬品の2つがあります。
一般医薬品は薬局やドラッグストアなどで、処方箋が無くても誰でも自由にできる購入できる薬のことを指します。一方で処方箋医薬品とは、処方箋なしでは購入できない医薬品のことを指します。
一般医薬品よりも処方箋医薬品の方が効き目は高い反面、副作用も高いことが多く、その利用は慎重にするべきだと言えます。
MRが扱うのは処方箋医薬品だけで、一般医薬品は扱いません。よってMRが営業する相手はドラッグストアではなく、病院や調剤薬局になります。
普通の営業職との違い
では、MRと普通の営業にはどのような違いがあるのでしょうか。先ほども説明した通り、MRの仕事は単なる薬の営業ではなく、薬が安全に使われるように情報提供を行うことでもあります。
通常の商流では製薬会社が薬を開発して、卸売会社が商品を仕入れて、病院や薬局の要望によって卸売会社が商品を病院や薬局に卸して、病院や薬局や消費者である患者に対して商品を提供します。
このときに注意したいのは製薬会社の営業は価格交渉をしてはいけないということです。これには2つの理由があります。
1つは商流の関係上、製薬会社は病院や調剤薬局に直接商品を販売することはないので、最終的に病院や薬局に商品を卸すときの価格の決定権は製薬会社に存在しないからということです。
2つ目に、MRの仕事はあくまでも薬が安全に適切に使用されるように情報を提供することが仕事であって、MRが価格競争などでダンピングを行って、適切な薬が選択されなければ、直接被害を受けるのは患者さんであるという倫理的な理由もあります。
MRは、MSや医療機器営業職とはどう違う?
以上がMRの仕事ですが、他にも医療関係の営業職としてはMSと医療機器営業職の2つがあります。これらとMRの仕事の違いについて説明します。
MRとMSの違い
MRとよく似た医療関係の営業としてMSがあります。MSとはMarketing Specialistの略称で日本語に直すと医薬品卸販売担当者と呼ばれています。つまり、医薬品の卸売会社の営業です。
先ほど説明した通り、MRは具体的な価格交渉や商品の納入交渉をすることはありません。しかし、病院や薬局に対して医薬品を供給するのならば誰かが具体的な価格交渉や納入交渉の営業をする必要があります。
これを担当するのがMSです。MRが医薬品に対する情報を伝えて、医師や薬剤師が商品の仕入れを希望する際はMSが具体的な納品条件の交渉をして販売します。
他の業界の営業も多かれ少なかれ、メーカーの営業と商社の営業にはこのような関係性があります。商社が具体的な顧客はグリップして交渉をしていて、商品に関する専門的な知識が必要になるとメーカーが適宜フォローするという流れはどの業界にもあります。
医薬品業界の場合は、このメーカー営業(MR)と商社営業(MS)の違いがきちんと区別されているのです。
また、ただ商品の販売に寄与するだけではなく、病院や薬局、MSから医薬品に関して受けたフィードバックをきちんと製薬会社内の開発部門に伝えることもMRにとって重要な仕事です。
MRと医療機器営業職の違い
ちなみに、MRやMSは医薬品を取り扱っている営業ですが、病院には医薬品だけではなく、病院業務のために使用する医療機器も必要となります。病院や薬局に対して医療機器を提供している営業が医療機器営業職です。
医療機器営業職とMRはもちろん取り扱っている商材も違いますが、仕事の仕方も大きく異なります。
まずMRとして営業するためにはMR認定資格を取得する必要があります。MR認定資格がなくても営業活動を行うことは可能ですが、一部の大病院はMR認定資格を取得していないと訪問できない場合もあります。
それに対して医療機器営業職は無資格でも病院に対して営業することが可能です。医療機器営業版のMR資格に相当する医療機器情報コミュニケーター(MDIC)という資格を業界団体では普及させようとしていますが、この資格が無くても営業は可能です。
また、MRの仕事は法律や省令によって規制されているのに対して、医療機器営業職の仕事はまだ法律の規制が少ないので、医療機器営業の方が比較的営業の自由度は高いです。
例えば、医療機器営業職は営業してMSなどの業者を通さずにそのまま商品を販売することも可能ですし、ときには手術室の中で機器の使用に立ち会う場合もありますが、MRの営業エリアはほとんど医局の前になります。
MRの年収やキャリアについて解説!転勤が多いって本当?
では、MRの年収やキャリアはどうなっているのでしょうか。転勤が多いのではないかという噂とともに紹介します。
MRの年収
転職サイトのDODAが調査した「平均年収ランキング2017」によると医薬品メーカーの平均年収は601万円、更に営業職に限定した平均年収は651万円という結果が発表されています。
日本の平均年収は400万円代中盤であることを考えると、MRの平均年収は高いということがわかります。また、医薬品メーカーの大手になれば平均年収1000万円超えの企業も存在します。
よって、数ある仕事の中でもMRの仕事が高年収だと考えても良いでしょう。
MRのキャリア
では、MRはどのようなキャリアを経ることになるのでしょうか。
基本的には製薬会社内で出世を目指していくことになります。役職なしから、係長、課長、部長と徐々に出世していく役員を目指すというのが通常のキャリアプランです。
医療品メーカーは事業規模が大きく、待遇が良い会社も多いので社内での出世を目指した方が良いでしょう。
ただし、IT技術の進歩によってMRの付加価値が相対的に少なくなっているために、MRの仕事に見切りをつけて違うキャリアパスに挑戦する人も最近では増えてきています。
MRは具体的な価格競争などをしないという意味では営業の仕事を完全に行っているわけではありませんが、仕事について何らかの商材に関する専門性を身につけて、顧客との長期的な信頼関係を醸成していくという点では他のBtoBの営業職に転職することも可能です。
MRのキャリアは多様化する傾向にあります。
MRは転勤が多いのか?
ちなみにMRは転勤が多いという噂がありますが本当なのでしょうか。
まず、前提として医薬品メーカーは事業規模の大きな会社が多く、全国に医薬品を供給している会社がほとんどです。
通常のメーカーならば、代理店や商社を通じて販路を拡大すれば良いのですが、製薬会社の場合MRが病院や薬局に対して正しい医薬品の情報を伝えなければならないので、全国に支社を設ける必要があります。
よって、基本的にはMRの仕事は転勤することが前提となります。
ただし、例えば他の大手メーカーの総合職と比較して著しく転勤が多いのかと言われればそうではありません。
転勤の頻度は7年から10年位に1回位の頻度で決して大手メーカーとして転勤の頻度が高いわけではありません。
顧客と営業の間に必要以上の関係性ができてよからぬ取引をしないように定期的に職員を転勤させる金融機関の方がはるかに転勤頻度は高いと考えられます。
また、基本的には転勤が前提になりますが、会社によっては転勤について配慮してくれる場合もあります。一般的に転勤を覚悟しなければなりませんが、その頻度は他の業界と比較して決して多いというわけではありません。
MRの魅力・やりがいとは?
では、MRの仕事にはどのような魅力ややりがいがあるのでしょうか。
人の生命に関わる仕事である
まず、MRの仕事は人の生命に関わる尊い仕事です。直接患者の手術をしたり、薬を処方したりするのは医師や薬剤師であっても、その活動はMRのサポートなしでは行うことはできません。
MRからの情報提供がなければ、医師や薬剤師は患者に対して適切な医薬品を提供することができませんし、結果として患者に治療に大きな悪影響が発生する場合があります。
MRも医師や薬剤師と並んで、日本の医療を支えるために必要不可欠な存在なのです。
スペシャリストとして好奇心が満たされる
また、他の営業職と比較してもMRは高い専門性が要求されます。医薬品という高度に専門的な商材を扱いますし、医薬品は日進月歩で成長していて、常に新しいノウハウや研究成果がMRにも還元されます。
また、MRが医師や薬剤師から入手してきた現場のデータが、製薬会社の研究開発に活かされるので、MRは日本の医薬品の進歩のために重要な役割を果たしており、常に医薬品に関するさまざまなデータがMRをハブにして流通します。
営業として特定の業界のスペシャリストになりたいという場合はMRは良い営業職です。
MRのメリット、デメリットをまとめました!
では、MRの仕事にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
MRのメリット
まず、MRのメリットとして挙げられるのが、年収が高いことです。年収については先ほど詳しく説明しましたが、他の業界よりも高く設定されています。
よって、営業として高い年収を狙うのならばMRは良い営業職でしょう。
また、事業規模が大きく、きちんと利益を出している会社が多いので、他の業種と比較すると福利厚生は充実している傾向があります。
営業職の場合は、社員への待遇をインセンティブという形で年収に特化させて、福利厚生はお粗末な会社も少なくはありませんが、製薬会社は高年収でありながら、福利厚生も両立させている会社が多いです。
また医療職の多くは医師免許や薬剤師免許、看護師資格などのように専門的な資格が必要になりますが、MRの場合は文系でも入社することも可能です。
MR資格が無くても営業に制限が課せられますが営業すること自体はできますし。MR認定試験もそれほど難しいものではありません。文系から医療職に携わって高年収を狙いたいという場合は良い入口だと言えます。
MRのデメリット
もちろんMRの仕事はメリットだけではなくデメリットも存在します。
まず、平均年収は高いですが、インセンティブがそれほど高いわけではないので年収には上限があります。
外資系の医薬品メーカーの中にはインセンティブを多くつける会社も存在しますが、MRの仕事の性質上、具体的な交渉はMSがしますし、病院側の薬のニーズによって頭打ちもあるので、成約を大量に獲得してくるということは難しいです。
また、転職や独立には向いていない職業です。
MRを経験することによって営業としての普遍的なスキルは身につけることができますが、金融などの他の営業の方が売るのが難しいので営業力を身に着けやすい傾向があります。
また、通常のメーカーのメーカーと同じように特定の専門分野に特化した営業としてキャリアパスを形成するので、年齢を経れば異業種に対する転職はどんどん困難になっていきますし、独立・開業などに向くキャリアでもありません。
また、MRの仕事は一般的にきついと言われています。これについては次の項目で詳しく説明します。
MRは激務?辛いと言われる理由を解説します!
MRの仕事は一般的に激務と言われています。なぜMRの仕事が辛いと言われているのか、その理由について説明します。
医療関係者によってのMRの価値が減ってきている
医師や薬剤師は忙しい中で限られた勤務時間の中で仕事をこなす必要があります。よって、医師や薬剤師もMRがただ訪問してきたというだけでは、あまり会いたいと思いません。
MRは医薬品の情報を医師に伝えてくれますが、MRが伝える医薬品の情報は専門のWEBサイトでもチェックすることができます。
また、具体的な納入条件の交渉をするのはMRではなくMSなので、MRに対して医薬品の仕入れ交渉はできません。
昔はそれでも、製薬会社の経費で色々接待をしてくれる、一部の医療関係者にとってはありがたい存在でしたが、今では接待規制が厳しくなっており、MRができる接待の手段は限られてきました。
よって、忙しい医師がわざわざMRのために時間を割く必要性がどんどんなくなってきています。このような状況の中で、医師にアポイントを取る、そもそも営業する機会を作るということがどんどん大変になってきています。
拘束時間が長い
また、アポイントが取りにくいこともあり、拘束時間は長くなる傾向にあります。
平日は診察が忙しくてMRの話を聞いてくれない医師に対して、土日や定時後に訪問したり、土日に開催される研究発表会や講演会、その後の懇親会に参加したりなど、通常の営業時間外こそ営業する必要があります。
このように定時後や土日に営業することが多いですが、その分だけ平日に休めるというわけではありません。平日は平日としてMRの仕事をしなければならないのです。
このような理由から他の営業職と比較して拘束時間が長くなっています。
MRはどの位激務なのか
このようなMRですが、決して他の仕事と比較して著しく激務というわけではありません。確かに一般的なメーカーと比較すると休みは取りにくいし、ノルマに対するプレッシャーは強い傾向にあります。
ただし、忙しさだけで言えば総合商社の営業などの方がカバーしなければならない業務が多岐に渡る分だけMRよりも忙しいと考えられます。
また、ノルマに対するプレッシャーで言えば、証券や保険、銀行などの金融機関の方が強いと考えられます。
トップMRとして活躍する秘訣・営業のコツとは?
では、トップMRとして活躍する秘訣・営業のコツなどはあるのでしょうか。
医師のスケジュールを考えてアポイントを取る
まず大切なのは医師のスケジュールを考えてアポイントを取ることです。
先ほども説明した通り、医師は忙しくてMRと会うメリットもほとんどないので、いかにして医師にアポイントを取り付けるのかが重要となります。
土日や休み時間など医師が時間をとってくれそうなタイミングで医師が会ってくれそうな理由を考えていかにアポイントをとるのかがトップMRとその他のMRの大きな違いです。
医師からの信頼を勝ち取る
やみくもに新規営業するために医師とアポイントを取ろうとしても医師はなかなか会ってくれません。MR営業の際に注目すべきは医師同士の横のつながりです。医師は自分の所属している病院だけではなく出身大学や所属している学会などによって横につながりを持っています。
MR営業をする際には、不特定多数の医師を幅広く攻略しようというよりもまず、特定の医師の信頼を得て、そこから横のつながりで他の医師を紹介してもらった方が良いでしょう。
そうした方が効率的にアポイントを獲得できますし、結果的に早く医師の開拓ができます。
MRに転職する方法を解説!未経験の募集はある?
MRに転職するためにはどうすれば良いのでしょうか、未経験でも転職できるのかについて説明します。
MRへの転職方法
転職サイトや転職エージェントを使用すれば比較的MRの求人自体は見つかります。ただし、人気の業界ではあるので簡単に転職ができるとは限りません。
特に製薬業界未経験だと専門的な知識を身につける必要がありますし、営業自体未経験だと採用されるのは更に厳しくなります。
製薬業界でMRとして実績を出して他所の会社に転職するという場合はいくつかの会社に応募すればどこかの会社には内定をもらえるとは考えられますが、基本的には難しいと考えてください。
未経験からMRを目指す場合
とはいえ、未経験からのMR転職は不可能というわけではありません。MSや医療機器営業職からの転職であれば人材の状況によっては十分に転職できる可能性があります。
また業界未経験でもどうしてもMRになりたいという場合はコントラクトMRになる方法も考えられます。
コントラクトMRとは、製薬会社のMR版の派遣社員のようなものです。コントラクトMRはCSOという製薬会社にMRを派遣し、医薬品の営業・マーケティングのアウトソーシングを受ける会社です。
コントラクトMRであれば、製薬会社のMRよりも採用される確率は高いですし、そこで実績を積んで製薬会社のMRに転職するというキャリアパスも考えられます。
MRに必要なスキル、資格とは?
では、MRに必要なスキルや資格はあるのでしょうか。
まず、先ほどから説明しているとおり、MRの仕事にはMR認定資格という専門の資格があります。
MRの資格が無くてもMR業務自体は行うことができますが、MR営業として最低限としての知識を身につけていることを証明するためにMR認定資格は取得している営業が多いです。
また、これも必須ではありませんが、MRの中には薬剤師の資格を取得している人も存在します。MRは給料が良く、専門性を活かせるために薬剤師の就職先としても人気があります。
ただし、薬剤師の資格を取得するためには6年間大学で勉強しなければならないので、転職するために薬剤師の資格を取得するのはコストパフォーマンスが悪いので持っていないからといって取得を目指すべきではありません。
スキルについて、転職する際には営業としての一般的なビジネスマナーについては身につけておいた方がベターです。
MRからの主要な転職先をまとめました!
では、MRからの主要な転職先としてはどのような企業が考えられるのでしょうか。
同業への転職が多い
基本的にメーカーの営業の一種なので、なんでも売れる営業力が身につくというよりは、一部の業種とターゲットに専門特化した営業力が身につくことになります。
よって、MRから転職する場合もMSや医療機器営業職のように医療機関を相手にした営業という範囲内で転職する人が多いです。
また、本記事では詳しく紹介していませんでしたが、臨床開発モニター(CRA)、治験コーディネーター(CRC)という仕事もあります。CRA、CRCとは開発中の医薬品の治験に関する諸手続きを行う仕事のことで、MRとしての専門性も活かしやすいです。
異業種に転職する場合
基本的には医療業界内で転職することがありますが、他にも医療系のIT企業や広告代理店など、医療業界に携わっていたという経験を活かして転職をする人が多いでしょう。
若い場合は医療業界と関係ないまったくの異業種へ転職することも可能ですが、基本的にはMRとしての経験を活かした転職をする方がすぐに内定を獲得しやすいです。