分類されるべき営業
法人営業は、大きく「取り扱う商品」によって分類できます。
※なぜ、営業をスタイルで分類する必要があるのか。分類することのメリットについては「営業」を一括りに捉える落とし穴をご覧ください。
なぜ、取り扱い商品によって分かれるのか?
それは取り扱う商品やサービスによって、顧客が営業パーソンに求めるものが異なるからです。
例えば、オフィスのパソコンを購入する際、顧客は製品の機能や特徴、メーカーによる差異を知りたがります。
そのため、営業パーソンは自社商品の特性や特徴、他社より優れた点を伝え、選択してもらうスキルが求められるでしょう。
一方、社内で営業管理システムを導入する際、顧客は現状の複数の問題を解決してくれる何かしらの仕組みを求めています。
そのため、営業パーソンは現状を正しく把握した上でいくつかのサービスを組み合わせて、適切に問題を解決するスキルが求められるでしょう。
このように、商品が異なれば、顧客が求めるものも異なり、営業パーソンに求められるものも異なってきます。こららの取り扱う商品は勘定科目でグルーピングすることができ、それぞれの勘定科目に応じて必要な営業スキルを定義することが可能です。
つまり、取り扱う商品の特徴を捉え、求められる営業スタイルを採る必要があるのです。(より厳密には、同じ商品でも商品単価の大小や市場の成熟状況などによって顧客の求めるものが異なってくるため、これらの影響も加味した上で、最適な営業スタイルを採る必要があります)
5つの営業スタイル
では、どのような営業スタイルがあるのでしょうか。取り扱う商品の種類によって、営業スタイルは5つに分類することができます。(取り扱う商品は勘定科目で大別することが出来ます。勘定科目での対応も併記しておきます)
①サポート営業
サポート営業とは、顧客と構築した人間関係をもとに提案を行う営業です。
日用品やオフィス用品、製造用汎用備品など、消耗品の営業時に求められます。勘定科目の消耗品費にあたる商品です。
比較的安価で、概ね安定した価格で取引されているため、
顧客は営業パーソンとの人間関係や融通の利きやすさを重視する傾向があります。
そのため、営業パーソンは人当たりの良さや調整力が必要となります。
また、ネット通販の拡大により、営業パーソンを介した日用品の購入は縮小傾向にあるため、
今後はさらに、顧客からの無理難題を何とかする調整力や人としての高い魅力が営業パーソンの付加価値となっていきます。
②バリューチェーン営業
バリューチェーン営業とは、自社や商品に対する信頼性をもとに商品やサービスの円滑な継続供給を提案する営業スタイルです。
生産設備や製造原材料、仲介品などの商品の販売に求められます。勘定科目の売上原価に相当します。
製品の原料にあたるものを安定的に、継続して仕入れられることは顧客によって重要事項です。そのため、顧客は仕入れ先の選定において企業や営業パーソンが信頼できる存在がどうかが意思決定に大きく左右してきます。
したがって、営業パーソンは顧客からの製品や自社に対する信頼を勝ち取り、
円滑に、継続した購入をいただくアプローチが重要です。
③プロダクト営業
プロダクト営業とは、自社の商品やサービスの特性や特徴、他社優位性を前面に提案を行う営業スタイルです。
汎用的なOA機器やSaaS、交通広告のような定形での広告などを販売するときに求められます。勘定科目のソフトフェア利用料に相当します。
各企業から同様の商品が売られているものが多く、顧客は製品の機能や特徴、メーカーによる差異を知りたいと思っています。営業パーソンは、自社の商品の仕様やメリットを正しく伝え、顧客に選んでもらうスキルが必要です。
また、顧客の状況によっては競合との仕様差異は決定的にならない場合も多いため、必然的により多くの顧客に対してのアプローチを行うことも必要となります。
④ソリューション営業
ソリューション営業とは、顧客の現状を踏まえたうえで問題解決のための提案を行う営業スタイルです。
注文住宅や業務アウトソーシング、生産設備を販売するときに求められます。勘定科目の業務委託費や資産性商材に相当します。
顧客は様々な問題を抱えており、顧客の実情に照らし合わせた提案が必要とされます。そのため、営業パーソンは顧客の問題を適切に把握するヒアリング能力や、解くべき課題の明確化、最適な解決策の提示する面談スキルが求められます。
また、相対的に高額案件での商談が多くなることで顧客内における承認フローも多岐に渡るため、組織攻略を行うための計画立案スキルも必要とされます。
⑤コンセプト営業
コンセプト営業とは、業界や商品に精通した知見をもとに、「あるべき姿」を指導的な立場で提示する営業スタイルです。
大規模CM広告やM&A、ヘッドハンティングなどの営業に求められます。勘定科目の広告宣伝費や採用費に相当します(いずれも高額の場合)
費用対効果が見えにくいものが多いため、顧客はその商品導入後のあるべき姿や理想とする世界観に共感することで購入に至ることが特徴です。そのためには、営業パーソンは卓越した業界知識と顧客をあるべき方向に導くスキルが必要です。
営業スタイルの比較
具体的に営業スタイルによってどのような商談の進め方になるのか。
例として、蛍光灯を補充するために来店された顧客を想定して、営業スタイル毎の営業パーソンのアプローチ方法を見てみたいと思います。※差異を明確にするため、多少誇張して表現しています
①サポート営業の場合
親身かつ迅速な対応が売りのサポート営業では、蛍光灯という汎用品をそのまま提供します。
②バリューチェーン営業の場合
顧客との継続的な関係性構築をモットーとするバリューチェーン営業では、蛍光灯の定期納品を提案します。
③プロダクト営業の場合
より仕様が複雑な商品を、自社製品の優位性を比較しながら提案するスタイルのプロダクト営業では、例えば、調光システム付きの蛍光灯を提案します。
④ソリューション営業の場合
顧客の現状と問題をヒアリングし、最適な解決策を組み合わせて提示するスタイルのソリューション営業では、現状ヒアリングから室内環境の不備を指摘し、壁紙の塗り替えを含めたリノベーションの提案を行います。
⑤コンセプト営業の場合
あるべき姿や理想の状態を提案するスタイルのコンセプト営業では、住環境の最善策として、日当たりの良いマンションへの引っ越しを提案します。
各営業スタイルのイメージは掴めましたでしょうか。
それぞれの営業スタイルの特徴を理解いただけたと思います。
また、営業スタイルを変えれば、色々な商品を販売できる可能性を感じたのではないでしょうか。
商品によって求められる営業スタイルは異なります。
だからこそ、自身の取り扱う商品を理解し、最適な営業スタイルをとることが重要です。
また、各営業スタイルごとに有効なマネジメントや人事考課も異なるため、連動させる必要があります。