化粧品業界の構造、誰が顧客なのか解説!
化粧品に営業の仕事について説明する前に、まず化粧品業界の流通構造について説明します。化粧品の流通を理解することは営業の仕事を理解する上でとても重要です。
化粧品の流通構造の概要
化粧品の流通チャネルは実は他の業界と比較しても少し複雑です。流通チャネルは「制度品販売」「一般品販売」「訪問販売」「通信販売」「業務用販売」の5つに分類することができます。
それぞれの流通チャネルによって営業のターゲットとなる顧客も営業方法も異なります。
制度品販売-百貨店の化粧品売り場
まず、化粧品の流通チャネルにおいて大きなシェアを占めるのが制度品販売です。制度品販売とは化粧品メーカーが直接、小売店と契約して商品を販売するシステムです。
契約した制度品販売店には化粧品メーカーから美容部員というメーカーの社員が派遣されて、美容部員が小売店でそのブランドの商品販売を行います。
また、化粧品メーカーが外部の小売店ではなく、グループ会社の化粧品販売店を通じて商品を販売するケースも制度品販売に含まれています。
1923年に資生堂がこのシステムを開発したのが制度品販売の始まりで、カネボウ、花王などの大手企業は軒並み百貨店などでこの販売方法を行っています。
一般品販売-ドラッグストアや量販店
ドラッグストアや量販店などで美容部員を派遣せずに店頭販売するのが一般品販売という手法です。一般品販売は美容部員を派遣する必要が無いために流通チャネルを安価で維持することが可能です。
どちらかといえば、化粧品の中でも低価格帯の商品を販売する際に用いられる流通チャネルです。流通の方法としてはメーカーから問屋を通じて各小売店に対して商品が納品されます。
訪問販売-販売員が訪問販売
生命保険における生保レディのように、顧客の自宅に訪問販売するスタイルが昔はありました。ただし、通信販売の発展や販売員の高齢化により、現在は訪問販売による流通は減少傾向にあります。
メーカーは支社や代理店などを通じて販売員に商品を供給して、販売員が商品を顧客に販売します。
通信販売-WEBやカタログ
近年成長しているのが通信販売の流通チャネルです。一昔前は通信販売と言えばカタログ通販でしたが、近年はどんどんWEB通販に流通チャネルがシフトしていっています。
また、通信販売を行っている化粧品メーカーの中には制度品販売や一般品販売のような販路を構築することが困難な中小・零細メーカーも含まれています。
業務用販売-美容院やエステサロン
上の4つの流通チャネルは最終的に商品を購入するのは消費者ですが、美容院やエステサロンのような店舗で使用する化粧品を販売するチャネルがあります。それが業務用販売です。
業務用販売は他の流通チャネルとは異なり、商品自体が業務販売専用の商品であることが多く、メーカーによっては直接、美容室やエステサロンなどに訪問して営業を行います。
常に流通チャネルにおいて10%弱の一定したシェアを獲得しています。
無くなりつつあるチャネルの壁
一昔前は、ここで紹介した各流通チャネルには壁があり、メーカーやブランドによって棲み分けがありました。しかし、今やこの壁は無くなりつつあります。
制度品を販売しているメーカーでも、商品を一般品として流通させていたり、通販も行っていたりと複数の流通チャネルを使って販売することが一般的になってきています。
よって、メーカーによってこの流通チャネルで販売しているからこの営業をすれば良いという決まったパターンはなく、一口にメーカーの営業といっても色々な流通チャネルに対する営業を行う必要があります。
化粧品メーカー営業の仕事内容を解説!百貨店向け、小売店向けではどう違う?
では、以上のような流通チャネルに関する知識を前提として化粧品メーカーの営業の仕事内容について説明します。
化粧品メーカー営業の仕事内容
まず、基本的に化粧品メーカーの営業は直接消費者に対して商品を売り込むことはありません。美容部員や小売店などが直接消費者に対して商品を届けます。
営業の仕事は大きく3つにわけることができます。1つは美容部員の管理、もう1つは小売店への営業、最後に業務用販売です。
美容部員の管理-百貨店への営業
まず化粧品メーカーの仕事の1つとして挙げられるのが美容部員の管理です。百貨店などの制度品販売店では自社の美容部員は日々、消費者を接客して自社ブランドの化粧品を販売しています。
この美容部員を管理、サポートして制度品販売店の売上をあげるのが営業の仕事の1つです。この制度品販売を支援する営業を別名スーパーバイザーとも呼びます。
スーパーバイザーは担当している店舗を回って、店舗の売上管理や美容部員のマネジメント、商品の販促指導などを行う店長的なポジションです。制度品販売の売り上げを左右する化粧品メーカーの営業の重要な仕事です。
また、そもそも自社が出店していない百貨店などで制度品販売を新規で行いたい場合はその営業から行う必要があります。百貨店の化粧品売場の責任者に対して自社のブランドの化粧品のプロモーションや出店交渉を行い、自社の商品を販売できるスペースを確保します。
一般品販売の営業-小売店への営業
続いて小売店への営業について説明します。化粧品を卸す小売店は基本的にドラッグストアやコンビニなどのチェーン店になります。
このようなチェーン店に対する営業はその会社の本部に対して一括に行い、いちいち個別の店舗に価格交渉などの営業をすることはありません。
ただし、一部の重要な店舗にたいしては、営業が一般品販売の小売店を回って、自社商品の売場チェックや店頭での販促支援などを行うケースはあります。
販社を通じて卸売りを行っている場合も同様です。
業務用販売の営業-美容室やエステサロンへの営業
続いて美容院やエステサロンのような店舗に対する業務用販売について説明します。
美容室やエステサロンで使われている商品は基本的に消費者向けの商品とは別のラインナップになっていて、販売する場合も、制度品や一般品の販売とは別の部署が担当することが多いです。
美容室やエステサロンに1件ずつアウトバウンドで営業していると時間がかかるので、基本的には重要な店舗だけ営業が積極的にフォローして、あとはインバウンドで適宜注文を受け付けるという形式が多いです。
日本の化粧品メーカーの海外進出
また、上記の営業の仕事に加えて、近年注目されているのが日本の化粧品メーカーの海外進出です。例えば、資生堂は既に売上の6割近くが海外からの売上となっています。
海外進出を積極的に行っているメーカーには海外営業の部署が設けられていることもあり、海外の小売店や販売代理店の開拓やその販売促進の営業などを担当することもあります。
場合によっては現地に出張して店舗を視察したり、現地の代理店を開拓したり、更に単身赴任で現地の市場を開拓することも考えられます。
化粧品メーカー営業のやりがいとは?メリット、デメリットを解説!激務って本当?
では、化粧品のメーカーの営業の仕事にはどのようなやりがいがあるのか、そのメリットやデメリットと共に紹介します。
化粧品メーカーの営業のやりがい
化粧品のように日常的に使う商品のメーカーは一般人の認知度も高く、テレビCMや店舗などを日常生活で見かけることもあります。
誰もが知っているメーカーの商品販売を支えているという自負は仕事において大きなやりがいとなります。
また、化粧品メーカーの営業は化粧品が好きな人にとってはとてもやりがいのある仕事です。顧客のニーズを捉えるために常に美容に関するトレンドや最新情報をチェックすることができますし、当然消費者よりも先行して情報を入手できることがあります。
化粧品や美容について興味を持っている人にとっては、化粧品や美容の最新情報が手に入ることはやりがいとなります。
化粧品メーカーの営業のメリット
続いて化粧品メーカーの営業のメリットについて説明します。
まず、やりがいの部分で説明した、美容に関する情報を入手できるということはやりがいでありながらメリットでもあります。
他のメリットとしては営業の中でも比較的容易なことが挙げられます。化粧品販売において最も重要なことの1つはその化粧品をきちんとブランディングしておくことです。逆に言えば、ブランディングされている商品を売るのはそれほど大変なことではありません。
化粧品メーカーの営業は、化粧品という誰が売っても、機能が変わらない商品を販売しているので営業職全体で比較しても、営業は比較的楽です。
また、年収が安定しやすいというメリットもあります。
景気に左右される業種では、不景気になればいくら頑張っても会社の業績が悪くなるので年収が下がってしまいがちです。一方で化粧品メーカーは不況に強いと言われています。
女性にとって化粧品は必需品なので景気が悪くなったとしても売上にあまり影響を受けないのです。そのため、化粧品の営業の年収も他の景気の影響を受けやすい業界の営業と比較して安定しています。
化粧品メーカーの営業のデメリット
続いて化粧品メーカーの営業として働くデメリットについて説明します。
まず挙げられるデメリットとして就職が難しいことが挙げられます。一度化粧品メーカーに営業として入社さえできれば問題ありませんが、化粧品メーカーは女性に人気の就職先なので当然倍率も高くなります。
転職する際にも、化粧品メーカーばかり選んで選考を受けているとなかなか内定を貰えないというケースも考えられます。
また、年収が安定している代わりに著しく高額になることはありません。
証券や土地のように個人の営業力によって成績が格段に変わる商材の営業パーソンは高額なインセンティブを獲得できます。一方で、化粧品をどれだけ売れるかは、営業パーソンの腕ではなく、化粧品のブランド力に大きく依存します。
よって一般的にインセンティブの幅も小さく、優秀な営業パーソンといえども、他社と比較して突出した成果を上げられるわけでもなく、給料がインセンティブによって高額になることもありません。
安定して高額な代わりに突出した高収入になることもないのが、化粧品メーカーの営業のデメリットです。
化粧品メーカーの営業が激務なのか
では、化粧品メーカーの営業は激務なのでしょうか。もちろん、営業ですからノルマを達成できなければ忙しく営業しなければなりませんし、メーカーの商品が売れるかどうかは営業パーソンの腕よりもその商品のブランド力や価格に大きく影響されます。
つまりブランド力が無い商品を売ろうと思えば営業がマメにフォローしなければならないので、忙しくなりますし、営業力のある商品はある程度クライアントが売り場に置きたいはずなので、営業先から注文が届くので営業しやすいはずです。
メーカーの営業は一般的に営業の中でもゆったりと働くことができて、化粧品特有の忙しくなる事情なども考えられないので基本的には激務ではないと考えて良いでしょう。
ただし、スーパーバイザーが一度に多くの店舗のチェックをしなければならない日や、新商品の発売に合わせて営業がその商品を色々な小売店にプッシュしたいタイミングなど、ピンポイントで忙しくなるタイミングが発生するということは考えられます。
化粧品メーカー営業にはどんな人が向いている?デキる人の特徴やコツを解説!
続いて化粧品メーカーの営業にはどのような人が向いているのか、デキる人の特徴や仕事のコツについて説明します。
化粧品メーカーの営業に向いている人
まず、化粧品に限らず、メーカーの仕事はその商材が好きであったり、興味があったりする人の方が向いています。営業を成功させるためには少なくとも顧客よりその商品について詳しい必要があります。
顧客よりその商品について詳しくなるためには、自社の商品がどのような商品なのか開発やマーケティング部門からの資料に目を通すだけでは不十分なことが多いです。
営業パーソン自身が最新の美容のトレンドについて調べていたり、競合他社の製品と比較してどのような点が優れているのか自分の言葉で説明できたりする必要があります。
そのときに重要なのがその商材が好きであったり、興味を持っていたりすることです。
好きな商材であれば、調べるのもあまり苦にはなりませんし、仕事をやらされているという気にもなりません。また、営業として商品の良さを、説得力を持って説明することもできます。
化粧品メーカーの営業に向いている人は、まず化粧品や美容が好きな人です。
デキる化粧品メーカーの営業の特徴やコツ
続いてデキる化粧品メーカーの営業の特徴やコツについて説明します。
デキる化粧品メーカーの営業はまず身ぎれいであることが多いです。営業は直接消費者に対面して商品を販売するわけではありませんが、それでも美容に携わる人間として清潔感が求められます。
営業として、化粧品を小売店に営業する場合、身ぎれいか否かその営業パーソンに対して小売店が抱く印象によってやはり、売れそうかどうかという紹介している商品自体の印象まで変わってきます。
デキる営業ほど、営業を成功させるために身だしなみに気を使っています。
また、特に制度品の販売に関する営業にはマネジメント能力が求められます。美容部員のモチベーションをあげて、店舗で商品がきちんと売れる状態を作らなければ、制度品の営業は成果をあげることができません。
自分で直接商品を売らないからこそ、美容部員がモチベーション高く売れるようにフォローする必要がありますし、販売方法や新商品のアピールポイントなどをきちんと美容部員に情報共有して、販売を成功させるマネジメント能力が必要となります。
また、一般品販売で成果をあげる営業パーソンは小売に関する知識を持っていることも多いです。一般品販売の場合は、美容部員などのマネジメントを行う必要がありませんが、小売店に自社商品の棚を確保して貰う必要があります。
もちろん、小売店が棚を確保してくれるのは、売れる商品です。
メーカー系の営業は特に小売店に出向いて販促用のポップなどで商品を売れやすくしたり、レイアウトについて意見したりして、自社の商品が売れやすくなるように小売店をフォローします。
一般品販売で小売店にきちんと商品を卸せる営業パーソンは、どうすれば小売店舗で商品が売れるのかということを研究していますし、ノウハウも持っています。
化粧品メーカー営業の一般的なキャリアを解説します!年収はどれくらい?
では、化粧品メーカーの営業は一般的にどのようなキャリアを経ることになるのでしょうか。年収などの待遇も含めて説明します。
化粧品メーカーの営業のキャリア
まず、化粧品メーカーは人気の働きやすく、女性にも人気の職業です。美容部員は離職率が高くなりがちですが、メーカーの営業は他の業界の営業と比較しても離職率は高くはないと考えられます。
新卒の場合は、総合職、美容部員、生産技術職と大きく3つに分けて採用されます。営業職は総合職の一部でマーケティング部門や経営戦略部門など様々な部署にジョブローテーションを積んで社内キャリアを形成していきます。
中途採用の場合は、基本的にポジション毎の採用とはなりますが、入社した後は、本人の適性と会社の人事戦略に応じて適宜配置換えが行われると考えられます。
転職を繰り返し各会社でスキルと実績をつけて、より良い条件の企業で働いたり、いずれ自分で独立しようというよりは、そのまま化粧品メーカーで働き続けるというキャリアを選ぶ人が多いでしょう。
化粧品メーカーの営業の年収などの待遇
激務なのかという所でも説明した通り、基本的に化粧品メーカーの営業には激務となりうる要素はありません。メーカーということで、長年働いて貰えるように福利厚生が充実している企業も多いでしょう。
様々な業界の年収や売上を掲載している「年収ラボ」によれば化粧品業界の平均年収は毎年550万前後で推移しています。日本人の平均年収が400万円強なので、平均年収の高い業界だと言えます。
平均年収が高い企業としては、花王833万円、資生堂767万円、ポーラ・オルビスホールディングス729万円などがあります。
もちろん、これは美容部員や工場の従業員も含めた平均年収なので、化粧品メーカーの営業だけで平均年収を計算すればこの数値よりも高くなることが予想されます。
単純な年収だけで比較すると金融や不動産の年収上位の企業には劣るかもしれませんが、働きやすさを考慮すると、待遇のコストパフォーマンスは良いと考えられます。
化粧品メーカー営業への転職方法を解説!必要な資格やスキル、適切な志望動機とは?男性でも就職できる?
色々、化粧品メーカーの営業について説明してきましたが、最後に化粧品メーカーの営業への転職方法や、必要な資格やスキル、適切な志望動機の書き方について説明します。
化粧品メーカーの営業への転職方法
化粧品メーカーの営業への転職は通常の転職と同様だと考えて大丈夫です。転職サイトや、転職エージェントを使ったり、会社の求人募集に直接申し込んだりする方法が考えられます。
ただし、注意するべきなのが化粧品メーカーの転職は狭き門だということです。美容部員は入れ替わりが激しいですが、化粧品メーカーの営業を含めてその他のポジションは、転職市場でも人気です。
採用確率を高めるためにはきちんと事前に対策を行う必要があります。
有利になる資格やスキル
では、化粧品メーカーへの転職を成功させるために有利になる資格やスキルはあるのでしょうか。
残念ながら化粧品の営業に関する資格は存在しません。よって、スキルで勝負する必要があります。ただし、スキルと言っても、何か特別な勉強をして身につけるわけではありません。
端的に言えば、前職での経験や実績が化粧品メーカーでも活かせるかということです。
化粧品メーカーの営業になるためには基本的にはBtoB営業の経験者が望ましいと考えられます。
また、商材や流通チャネルの類似性を考えると、アパレルやトイレタリー系のメーカーで営業として実績を積んでいる場合は、化粧品メーカーの営業でも前職で身につけた営業スキルを活かしやすいので選考でも有利になりやすいと考えられます。
また、スーパーバイザーとして転職する場合は、自分が店長のようなポジションでその店舗の業績アップに貢献しなければなりません。
化粧品メーカーの人事担当者が活躍しそうだと思う実績としては、実際に美容部員として働いて大きな売上を上げた経験がある人、フランチャイズのスーパーバイザーの経験がある人などが考えられます。
いずれにしても資格で他の希望者と差別化することができないので、前職の実績とそこで身につけたスキルが化粧品メーカーの営業でどう活きるかを説明するべきです。
志望動機の書き方
志望動機で気を付けることは、まず、先ほど説明した前職の経験からなぜ化粧品メーカーの営業になりたいのか、活躍できる根拠があるのかを盛りこむことです。
その上で、化粧品が好きである、興味を持っているということもアピールした方が良いです。向いている人の部分でも説明した通り、メーカーの営業はその商材が好きな人の方が活躍しやすい傾向があります。
もちろん、ただその商材が好きであるという熱意だけではなく、ビジネスという観点からその商材のどこに魅力を感じているかも説明した方が良いでしょう。
男性でも就職できるの?
ここまで化粧品メーカーの営業について説明してきましたが、魅力的だと感じた人も多いと考えられます。最後に、化粧品メーカーと言えば女性の仕事というイメージがあるけれども、男性でも就職できるのかについて説明します。
確かに、美容部員などは基本的に女性ですし、社内でも多くの女性が活躍しています。しかし、化粧品メーカーの中では男性も普通に働いています。
特に営業の場合は直接消費者に商品を販売するわけではないので、女性でも男性でも、きちんと商品のことを説明して、業績を上げられる人であれば性別を問われません。
男性でも十分に採用される確率があるので安心して申し込んでください。