ソリューション営業の商談では、段階的なアプローチを行うナビゲーションスキル(NSS)が必要だとお話しました。
ナビゲーションスキルについては下記の記事をご参照ください。
この記事では、ナビゲーションスキルの「顧客現状の把握」方法について解説していきます。手の込んだ提案も、顧客の現状に合わなければ、受け入れられることはありません。まずは顧客の現状を正しく認識し、顧客の実情に合った提案をしましょう。
3つのヒアリングポイント
顧客の問題を解決するソリューション営業では、必要な情報を的確に収集するヒアリングが重要です。
顧客を取り巻く環境の事実や状態、出来事、更にそれらに対する顧客の方針や思いをヒアリングします。
以下、ヒアリングを行う際に重要なポイントを3つ紹介します。
顧客の現状を正確に把握し、問題の抽出に繋げられるようにしましょう。
①「広く浅く」→「狭く深く」
顧客の現状を把握するためには、①広く浅く、②狭く深くの2つのステップを踏む必要があります。
すなわち、最初に顧客の全体感を捉えることで問題箇所に当たりをつけ、深掘りをしていくことで、過不足なくかつ効率的に顧客の現状を把握することが出来るようになります。
広く浅い質問
まずは、顧客の業務に関する一般的な話題を中心に、顧客が自由に話してくれるような質問を投げかけるようにしましょう。
顧客からなるべく多くの情報を引き出し、問題に関する手がかりやヒントをつかむことが重要です。
全体感を捉えるように意識し、次の段階で深掘りするポイントに目星をつけていきましょう。
〇「社内の営業進捗管理の仕組みについて教えて下さい」
×「アポイント数は足りていますか?」
狭く深い質問
次に、問題のありそうな分野に的を絞り、より具体的な情報を収集していきます。
具体的には、顧客の反応や問題の大きさを把握するために、数値を答えてもらうなどの定量化などを行う必要があるでしょう。
定量的に示すことが難しい場合は、予め選択肢を用意しておき、その中から選んで貰うようにすると、顧客も答えやすくなります。
質問例
「利用者は何名ほどになりますか?」
「契約形態は買い切りですか?それとも月額支払いですか?」
ただし、具体的な情報になればなるほど、顧客との認識のズレが起きやすく、致命的なミスにつながる可能性が高くなります。
顧客の言及内容を復唱してすり合わせを行ったり、事実の有無を確認したりすることでズレがないか確認するようにしましょう。
質問例
「ではこちらの製品を20名でご利用されているということですね?」
「オプションの契約はされていないという認識で良かったですよね?」
②「軸」と「階層」
話を広げる際も狭めていく際も、闇雲にヒアリングを行うと、核となる情報から離れていってしまう場合があります。
ヒアリングの軸を設定して行うことが重要です。
ではヒアリングの軸はどのように設定すればよいのでしょうか?
顧客の現状は、顧客の業務レベルによっていくつかの階層に分けて捉える事ができます。
また、階層により必要な視点(経営視点or現場視点)が異なってきますので、混同しないように整理する必要があります。
どの階層の状況を重点的に知る必要があるかは、自社商品/サービスや想定される問題によって異なります。
軸は自社商品/サービスの適用範囲を鑑みて選択する必要があるでしょう。
③オープンorクローズド クエスチョン
ヒアリングの軸に沿って話を広げたり狭めたりする際に有効なのが「オープン・クエスチョン」と「クローズド・クエスチョン」です。
「オープン・クエスチョン」とは問いかけに対して自由な回答を求める手法で、「クローズド・クエスチョン」とは状況や課題について特定の情報を得る、または限定的な回答を求める手法です。
先ほどの質問例では
オープン・クエスチョン
●社内の営業進捗管理の仕組みについて教えて下さい
クローズド・クエスチョン
●アポイント数は足りていますか?
●利用者は何名ほどになりますか?
●契約形態は買い切りですか?それとも月額支払いですか?
●ではこちらの製品を20名でご利用されているということですね?
●オプションの契約はされていないという認識で良かったですよね?
と分けることができます。
では、どのタイミングで、どちらの手法を用いるのが適切なのでしょうか。
結論から示しますと、質問の際にはできるかぎりオープン・クエスチョンを行うのが望ましいです。
なぜなら、顧客に自由に答えて貰うことで顧客中心の話し合いを進めることが出来るからです。
クローズド・クエスチョンは、顧客が有益な情報を話してくれない場合や、とりとめの無い話をする場合に有効で、具体的な論点を定めるために用いると良いでしょう。
まとめ
以上が「顧客現状の把握」で重要な3つのポイントの解説でしたが、イメージは掴めましたでしょうか?
ソリューション営業においては顧客の課題解決に向けた「オーダーメイドのプラン」を提示する必要があるため、ヒアリングによる顧客の現状把握が十分に行われていないと、課題の抽出・特定や解決策の提示に大きな影響を及ぼしてしまいます。
今回紹介した3つのポイントを押さえたヒアリングにより、的確な情報収集を行うことができれば、顧客の満足する提案へ大きく近づくでしょう。
自分の商談の場面に当てはめてアレンジを加え、実践してみてください。
次回は「問題の抽出」に入っていきます。